読書メモ(2009年5月その2)
東アジア都城紀行(叢書・地球発見)/高橋誠一/ナカニシヤ出版
- 作者: 高橋誠一
- 出版社/メーカー: ナカニシヤ出版
- 発売日: 2007/04
- メディア: 単行本
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よ〜は歴史地理学のセンセによる調査紀行文なんですが、フツーの学者センセならばウンチク、専門知識を散りばめてお堅い論文風にまとめてしまうところですが、このセンセの場合、調査しました、大変な旅でした、でも各地の人情に触れました、食べ物も美味しかった…みたいなルポルタージュ風にまとめているので、純粋に旅行本としても面白い。著者は書斎派というより、フィールドワーク派らしいが、"足でやる学問"を実感させる内容である。
絞首台の謎(創元推理文庫)/ディクスン・カー
- 作者: ディクスン・カー,井上一夫
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1981
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絞首台の幻影、エジプト・東洋趣味…という猟奇部分をひっぺがして、ネタが割れるとな〜んだ(大山鳴動して鼠一匹)というカーの悪いところの方が多く出てしまったよ〜な作品。本格推理としての弱さもあるんですが、それ以上に、メイントリックに古色蒼然たる隠し部屋、隠し扉という小道具、特殊な体型の人間という要素をひねり無く使ってしまっているというのが痛い…。
「『たしかにジャック・ケッチに追われるのも嫌なことですが……自分が罪を犯したら、アンリ・バンコランに追われるより、悪魔に追われたほうがましですな』」(本書221頁)。えらい嫌われようですが、探偵役バンコランのメフィストフェレスみたいなキャラクターはけっこう好きかな〜。あとがき(「アンリ・バンコランの横顔」)に、武部本一郎(ターザンとか英雄コナンシリーズの挿絵描いていた人)画のバンコラン肖像あり。イメージ通り。
古代中国思想ノート(信山社叢書)/長尾龍一/信山社出版
- 作者: 長尾龍一
- 出版社/メーカー: 信山社出版
- 発売日: 1999/11
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情報デザイン入門(ちくま新書)/木村浩
- 作者: 木村浩
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2002/10
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子どもと死について(中公文庫)/エリザベス・キューブラー・ロス
- 作者: エリザベスキューブラー・ロス,Elisabeth K¨ubler‐Ross,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/10/01
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著者は終末期医療学の名著『死ぬ瞬間』で有名な精神科医。現在、主流となっている終末期の精神ケアのパイオニア、権威的な存在だった人らしい。
死後の世界や臨死体験の積極的肯定とか、晩年の言動で、一部ではトンデモと批判されてはいるようですが(この本の中にも、そういった要素が含まれ、読んでいて多少抵抗感はある…)、著者のスタンスの根底には、"死"というものを即物的・物質的に扱う現代医療が、はたして"死"に直面した人間の救いになるのか?…という真剣な懐疑、問いかけがあるのだろう。
魔女の隠れ家(創元推理文庫)/ディクスン・カー
- 作者: ディクスン・カー,高見浩
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1979/04
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言語学者(?)のギデオン・フェル博士を探偵役にしたもの。児童向けのリライトで以前読んだように記憶していますが、細かい筋、犯人などはすっかり忘れていました。ただスタバース家の儀式(監獄でのお篭り)、伝説(頸の骨折)、じめじめっ〜とした監獄のフンイキだけはよく覚えていて、ああこれこれ…という感じ。こんな読み方じゃ、推理小説ファン失格?
本格推理小説要素と伝奇小説要素を見事に融合して、おまけに暗号、宝探しという要素まで付けたという意欲作で、カー入門編としてオススメできる名作。しかし、リンカンシャーの沼地のジメジメっとした描写は、なんというか、単に小説の背景描写を越えて、生理的にクルものがあるなぁ…。
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日―初版(平凡社ライブラリー)/カール・マルクス
- 作者: カールマルクス,Karl Marx,植村邦彦
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2008/09/10
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年表を見ると、本書がいかにHOTなアジ文書(誉め言葉…)だということが分かる。まるでカエサル、アントニウス、オクタヴィアヌスの向こうを張った、キケロ、小カトーもかくやといった感じである。理論家としてより、アジテーターとしての才能の方があったんじゃないの? メインテーマは民主主義体制で、なぜ独裁者によるクーデターが成功したのかという問いかけだけど、論旨そのものより描出されるルイ・ボナパルトの陰画イメージの方が印象に残るな…。
プリズナー(ハヤカワ文庫SF)/トーマス・M・ディッシュ
- 作者: トーマス M.ディッシュ,永井淳
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1977/03
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原作はどうだか知らんですが、あくまでディッシュ作品として読む。
オーウェル(『動物農場』『1984年』)ではじまり、カフカ(『城』)になってディック(「追憶売ります」)で終わるような感じ。以前、読んだ『キャンプ・コンセントレーション』に繋がっていく要素もあるような感じもする…。