テス(1979年/洋画)


やっと録画を消化…。


原作は文豪トマス・ハーディの長編小説。
監督は「戦場のピアニスト」のロマン・ポランスキー
農家の娘テスの哀しい転落人生をつづる文芸映画。


全編ナターシャ・キンスキー。これに尽きる。男の差し出す苺を貪る唇、口笛…うごめく唇、野卑な猥談にも動じないクール・ビューティー、乳絞りの魅惑的な手つき…匂うようなロリータ・エロスに、フェチ描写の数々、それらを粘りつくよ〜にうつしだすキャメラ。ポラちゃん…どうしちゃったの? この映画の枕として(かならず)語られるスキャンダルなエピソードを思い出してしまう。


映画自体はそう悪くも無く、雄大な自然と矮小な人間の対比、テスの孤高の美しさ…など原作の精神を踏まえたいい映画化なのだが、原作自体がいまとなってはロマネスクな話となってしまっているので、現代的視点で見ると突っ込みどころが多々あるのが難。要領悪い上に、極端な方向に走ってしまうテスは、男を喰らい殺す古代の野蛮な女神様のよ〜に見えなくもない。あるいは世紀末文芸お気に入りの主題ファム・ファタル(魔性の女)か。


つ〜か、テスが惚れるエンジェルがね…どこがいいのか、人間的にも貧相極まりないダメダメ君で…こんなの選んじゃ駄目だろう。遊び人のアレックが相対的にマトモっぽく見えることもあり、アレックが駄目で肘鉄食らわせてエンジェルならOKという基準が分からん。そりゃあ、正式の結婚と囲い者つ〜のはエライ違いだけどさ。それだけで刺し殺しちゃうのは、あんまりなのでは?


ストーンヘンジで終わる二人の道行は良かったけどね。
終始、テスが主導権を握ってるよ〜な感じがいい。
(2007年4月26日、NHK-BS2



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