オペラ座の怪人【ロイド・ウェバー版】(2004年/洋画)


オペラ座の怪人…懐かしい。ワタクシの場合、原作(ガストン・ルルー)→映画(1989年/米)TVドラマ(1990年/米)という順だった。(この映画の直接の原作となる)アンドリュー・ロイド・ウェバーのミュージカルは、原作の派生作品の中で最も有名なものなのだろうが、これまで見たことは無かった(存在は知っていたが…)ので、ロイド=ウェバーの音楽そのものは新鮮な気分で堪能した、ミュージカルとしては楽しめた…それはいいだろう。


ただ、劇中のオペラ…本物使わんのね。「ハンニバル」「イル・ムート」「ドン・ファンの勝利」…とオペラのパロディーとしては面白いが、それ以上のものでは無かったので、そこらへんは強く違和感を感じた…。


で、映像作品としてみると、エェェェェ! なんでこんなに安っぽいのよ、ロイド・ウェバーってな感じ。埃を被った廃墟(モノクロ)から色鮮やかに蘇るオペラ座、仮面舞踏会の華やぎ、目玉のオペラシーン、そしてシャンデリア落下→オペラ座炎上…確かに華やかなシーンは悪くなかった(イッツ、ゴージャス!)。でもねえ…華やぎの対照となるべき影の部分、闇の暗がり(地下のシーンね)があまりにも底が浅いというか、上辺だけなんだよね。明暗のコントラストが見せかけだけだから、"明"の部分も安っぽく見える…。


人間ドラマの部分も甘い。どいつもこいつも騒ぐだけの子供っぽい人間ばかりで、いくら歌って踊るミュージカル映画とはいえ、これは無いんじゃない? 醜い素顔を仮面に隠す怪人に、明日のスターを夢見る新人、彼女と幼馴染みだったイケメン青年貴族…と原作の人間描写や筋書き自体がロマネスクとはいえ、その分を差し引いてもペラペラなんだもん…見ていて疲れた。


カラフルな本編(19世紀)に、モノクロの本編後(20世紀)が交錯する趣向は試みとしては面白かったが、枠物語として充分に機能していたとは言いがたい。あのシーンのしっとりとした味が、本編にもあればね…。


な〜んか、90年のドラマ版がまた見たくなったなあ。あれ、バート・ランカスター(前支配人キャリエール)が狂言回しで、恋の三角関係に親子の物語を絡めた異色作だったけど、怪人の人間性がしっかり描かれていて、演出も地味ながらしっかりとした大人のドラマだったんだよな。特に終盤、グノーの歌劇「ファウスト」のファウストとマルガレーテに、怪人とクリスティーヌをダブらせる趣向と、ラストの静かな余韻はいまも記憶に深く刻み付けられている。国内盤のDVDは未発売なので、NHKに再放送プリーズとお願いしたい。
(2007年4月30日、レンタルDVD視聴)



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