ウォー・レクイエム(1989年/洋画)


■ウォー・レクイエム(1989年/イギリス)
原題:WAR REQUIEM
原作:ベンジャミン・ブリテン作曲「戦争レクイエム」
監督:デレク・ジャーマン/詩:ウィルフレッド・オーエン/音楽:ベンジャミン・ブリテン
出演:ナサニエル・パーカー、ティルダ・スウィントンローレンス・オリヴィエショーン・ビーンほか
演奏:ベンジャミン・ブリテン指揮/ロンドン交響楽団・合唱団ほか
独唱:ガリーナ・ヴィシネフスカヤ(S)、ピーター・ピアーズ(T)、D・F・ディースカウ(Br)
参照→ウォー・レクイエム - allcinema


ジャーマン×ブリテン×オーエン。


第一次世界大戦に散った詩人ウィルフレッド・オーエンの詩による、ベンジャミン・ブリテンの声楽曲「戦争レクイエム」Op.66を、鬼才デレク・ジャーマンが映像化。原曲については語りたいことが山ほどあるが、長くなるので割愛(詳しくは井上太郎『レクィエムの歴史』平凡社参照)。原曲の方は先にきいているのだが、こうして映像(しかも字幕付)で見るとまた格別…というよりグッと見通しが良くなる。ラテン語の式文とオーエンの詩文(英語)が絡みあうという構造のためか、音だけできくと分かりにくいのだが、祈りの文句と詩がぶつかり合い、対比し合う構造なのね…映像だと、ちぃよく分かった(古い…)。


戦場の悲惨さ、傷病兵の苦しみ、人間性すら破壊する「戦争」という名の狂気、死、死、死…原曲が叩きつけるイメージを、ドラマ、ドキュメンタリー、コラージュ…と各種映像をモザイク状に散りばめて受け止めるジャーマン。映像詩…ですな。ただ映像を散りばめるだけでなく、オーエンと恋人(看護婦)を狂言回しにストーリー性を持たせることで、分かりやすくも見せている。GJ。いい仕事してるぜ。これも同じゲイジュツカとしてシンパシイ故?(笑)


映像の性格上、音無しのパントマイム演技になるのだが、看護婦役のティルダ・スウィントンの慟哭演技はすっごい迫力。無音なのに、絶叫がビンビン伝わってきそうで、涙そうそうのツマブキ君なんて出直しておいで…みたいな。ドイツ人兵士役のショーン・ビーンは出番は少ないけど美味しい役…原曲の白眉のエピソードだからね。どんクサイ風貌があの悲劇にマッチしていたと思う。ナサニエル・パーカーは線の細い詩人役を好演していた。ローレンス・オリヴィエ御大が老兵士役で出演していたんだけど、もっと出番あればよかったのに…。
(2007年5月27日、レンタルDVD視聴)



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