たたり(1963年/洋画)


■たたり(1963年/アメリカ)
原題:THE HAUNTING
原作:シャーリイ・ジャクスン『山荘綺談』
監督:ロバート・ワイズ/脚本:ネルソン・ギディング
出演:リチャード・ジョンソン、ジュリー・ハリス、クレア・ブルームほか
参照→たたり - allcinema


シャーリイ・ジャクスン*1『山荘綺談』*2を原作に、「ウエスト・サイド物語」の巨匠ロバート・ワイズ監督が映画化したホラー映画。幽霊屋敷映画…というジャンルがあるならば、その古典的傑作といってもいいだろう。原作を読んだ後で見たクチだったが、うるさい原作読者をも満足させる丁寧な映画化で、その点でも好感度が高い。勘違いリメイク版*3とは大違いである。


レンタルビデオで)何回も繰り返し見た作品で、その意味では周知の作品なのだが、今回DVDで見直してあらためて気付いたのは、映像的美しさ。冒頭の少女が老婆へと変わる場面、後半の幻覚に踊るエレナー、クライマックスのらせん階段…役者の演技と効果音による怖さが喧伝され勝ちな本作であるが、こうした場面の美しさも見所である。あと撮影・美術もいい*4


特典として収録されている音声解説も面白い。映画関係者が本編の要所要所でコメントを付けるというアレなのだが、監督ワイズ以下ほぼ主要メンツ*5が揃っていて、撮影の経緯*6やら苦労話*7やら心霊ネタ*8やら…いろいろ語っています。往年の映画撮影事情もうかがえる貴重な資料ってことで、オールド映画ファンには嬉しいサービスかもしれない。
(2006年7月25日、DVDビデオ視聴)

たたり [DVD]

たたり [DVD]

*1:アメリカの女性作家。代表作は『くじ』『山荘綺談』など。アメリカン・モダン・ホラーの先駆者的存在としてのイメージが強いが、母親としての体験に基づくユーモラスなエッセイ(『野蛮人との生活』など)も忘れがたい。詳しくはwiki(英語)参照。

*2:ハヤカワ文庫版の邦題。わが愛しの愛読書。創元推理文庫でも『たたり』の邦題で出ている。

*3:ヤン・デ・ボン監督「ホーンティング」。原作をお涙頂戴の猿芝居に書き換えた改悪脚本と、全てにおいて勘違いしまくりの演出(見世物小屋かっちゅ〜の)が笑いどころの大駄作である。旧作に勝るのは製作費用だけというのが情けない。

*4:監督も音声解説の中でたびたび賞賛している。本作の怖さが"何もいない"画面の張り詰めた緊張感にあるとすれば、この賞賛は大袈裟ではないだろうと思う。

*5:監督ロバート・ワイズ、脚本家ネルソン・ギディング、エレナー役ジュリー・ハリス、セオドーラ役クレア・ブルーム、博士役リチャード・ジョンソン、ルーク役ラス・タンブリン…の6人。

*6:監督・脚本家が主に語っていますが、原作を読んで惚れ込んだ、原作の解釈に悩んで原作者と相談した、アメリカが舞台だがイギリスで撮影した…という話は興味深かった。

*7:ワザと歪んだレンズを使ったり、特殊なフィルムを使ったり、らせん階段シーンの撮影に苦労したり…監督のコダワリがうかがえます。主役のジュリー・ハリスは役に没入するあまりウツ症状気味だったとか。

*8:幽霊映画のお約束ですが(笑)。ラス・タンブリンが語っています。