『異端審問』 渡邊昌美(講談社現代新書)

異端審問 (講談社現代新書)

異端審問 (講談社現代新書)

図書館。ヨーロッパ中世史、宗教思想史。この手のテーマは昔から興味があったので、クセジュ文庫から出ていた同タイトルの本(『異端審問』ギー・テスタス/ジャン・テスタス著)を読んだことがあるが、あっちは完全に概説書止まり。読物としてはこちらの方がいいし、切り口もこちらの方が新しい。


著者の渡邊センセは『中世の奇蹟と幻想』『異端カタリ派の研究』など心性史、宗教思想史畑の研究で知られる方なので、審問される側("異端")からのアプローチかと思いきや、意外にも審問する側(異端審問官)のメンタリティーに注目したアプローチ。映画「薔薇の名前*1に悪役(!)として登場した異端審問官ベルナール・ギー*2の意外な実像についても紹介。


異端審問が(中世においては)驚くほど整備された裁判制度だったこと、および「魔女狩り」「ユダヤ人虐殺」のような集団ヒステリー的な迫害とはやや一線を画していたことが分かる(ここは俺も誤解していた)。

*1:むろん本書の中でも話題にあげていて、短いながらも映画版と原作の細かな違いを指摘していたり、なかなか味のある言及でした。

*2:あの映画を見てただのヤバイ人だと思い込んだ人は、よく読んで反省汁。俺も反省しました…。