『驚異の部屋』 エリーザベト・シャイヒャー

驚異の部屋―ハプスブルク家の珍宝蒐集室

驚異の部屋―ハプスブルク家の珍宝蒐集室

図書館。西洋美術史。西洋近世の蒐集活動およびWunder Kammer(驚異の部屋)についての美術研究書。チロル大公フェルディナント二世がアンブラス城*1に残したアンブラス城コレクションをメインに、ハプスブルク家の蒐集活動(有名なのが皇帝ルドルフ二世*2による蒐集)を紹介。


お高いだけにカラー図版は美麗。工芸品の類は細部も気になるだけに、これだけ鮮明だとなめるように堪能できるというものである。特に置時計(33頁)と天球儀(141頁)は…お持ち帰りしたいなあ…出来るものなら(笑)。惜しむらくはカラー図版がやや少ないことだろうか。あと図版のセレクションは、奇妙キテレツな物(ドラキュラの肖像画とかマンドラゴラとか畸形とか)よりも、美術工芸品を優先しているので、その点やや好みが分かれる。


テクストは"遊び"がない…というか、とにかく堅く生真面目(いかにも美術館員が書いた解説書みたいな〜)なのだが、上記ハプスブルク家の蒐集活動をメインに、Wunder Kammer(驚異の部屋)の成立と盛衰をドイツ語圏中心に手堅くまとめており、この手のテーマの概説としてはよく出来ている。

*1:オーストリア、チロル州インスブルック近郊にあるルネサンス様式の城。現在ウィーン美術史美術館の分館で、フェルディナント二世の蒐集の一部がいまも所蔵されている。→公式(ドイツ語)

*2:参照→ルドルフ2世 (神聖ローマ皇帝) - Wikipedia