栞と紙魚子の生首事件/諸星大二郎/朝日ソノラマ
諸星大二郎といえば、まず日本や中国の神話・伝説・歴史を下敷きにした伝奇作品(『暗黒神話』『孔子暗黒伝』『西遊妖猿伝』)、あるいは不条理なSF・ホラー短編あたりがイメージされるんだろうが、そのいずれとも毛色の違う作品(「ど次元世界物語」に代表されるユーモア物)があって、この「栞と紙魚子」シリーズもそうみたい。おどろおどろしいのは題と表紙だけ(笑)。
のっけから「生首」と穏やかならざるけど、料理がふるってる。
気にするのはソッチかyo!…"なまくびっち"とか。
「…大体 生首なんて飼えるの?」
「現に飼ってるじゃないの 飼育法の本もあるし…」
(中略)
「それにやっぱりこんな物飼うのよくないと思うのよ
ほら 押入れの中で生首を飼うなんて
おたくっぽくて暗いじゃない」
――「生首事件」本書18頁
胃の頭町(いのあたまちょう)に住む女子高生コンビ、栞(ボケ)と紙魚子(ツッコミ)が狂言回しの基本1話完結の読み切りスタイルで、一応奇怪でホラーな出来事がいろいろ起こるんですが、ほとんどギャグ落ちというか、不条理というかネジのトンだ展開になってしまってオチるという。これって、犬木加奈子とか古賀新一とか昔懐かしの少女ホラー漫画のパロディなんですかね?
主人公コンビがどちらも本と縁が深い(栞が新刊書店の娘、紙魚子が古本屋の娘)ということで、書籍ネタが多いのもいいですね(「殺人者の蔵書印」がモロだが、他の話でも本が何かの糸口、あるいは情報源となる)。氏のユーモア物が駄目って方も多いらしいですけど、ネタのブラックさと不条理な展開はシリアス物にも相通じるところがあるので、オススメしたいところだ。