読メモ拡大版10月

セネカ/ピエール・グリマル/文庫クセジュ白水社

セネカ (文庫クセジュ)

セネカ (文庫クセジュ)

図書館。帝政期ローマのストア派の思想家にして文人であったルキウス・アンナエウス・セネカの評伝。その生涯と思想、著作、後世への影響を新書サイズにコンパクトにまとめる。ただ、ある程度の事前知識を前提とした内容なので注意。目新しい指摘は、エジプト神話やユダヤ教など東方宗教からの影響の可能性だろうか。後世セネカの思想が"キリスト教的"であると、キリスト教神学者たちから評価・賞賛されたことを思うと、興味深い指摘だと思われる。

多文明世界の構図/高谷好一/中公新書

図書館。反・普遍主義。アジアの視野から見た世界秩序のあり方。読んでいて、ブラーシュ『人文地理学原理』とか和辻哲郎『風土』を連想したけど、やはり地球規模の「世界論」って、どうしても大雑把なものになりがち(元々これはダイジェストとして書かれたものだし、仕方のないことなのだが)…という気がしないでもない。でも西洋のウケウリだけじゃなしに、日本から、アジアからのものの見方を発信していく…というのも、これまた学問だろう。

国を壊すために/アルンダティ・ロイ岩波新書

帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ― (岩波新書)

帝国を壊すために―戦争と正義をめぐるエッセイ― (岩波新書)

図書館。インドの女性作家による9・11以降の世相…不安と暴力と不寛容…に対する怒りの書。「帝国」とはむろん、アメリカ「帝国」のことであろうが、それ以上に近代文明の暗黒面、グローバル化の歪みそのものを指す言葉なのだろう。そして、自国の偏狭な民族主義に対しても痛烈。個人的にはもっと冷静な分析を…と期待していたので、やや期待外れであったが、それでもやはり文章のパワーは感じる。比喩を尽くしたメッセージの数々はさすが作家。

セネカ入門―セネカと私/茂手木元蔵/東海大学出版会

セネカ入門―セネカと私

セネカ入門―セネカと私

図書館。著者はセネカの哲学著作を全訳された方である。その方が書かれたセネカ入門書ということで期待していたのだが、期待外れ。ベタに概説書で良かったと思うのだが。ピエール・グリマルの本でも読んでみるか…。

困ったときのベタ辞典/アコナイトレコード(編)/大和書房

困ったときのベタ辞典 会社で家庭で合コンで。

困ったときのベタ辞典 会社で家庭で合コンで。

図書館。このBlog連載をまとめて書籍化したもの。こういうのは、Blogの更新を楽しみながら、少しずつリアルタイムに楽しんでいく分なら面白いのだろうけど、まとめて読むとなんだかな〜という気が。パラ読みしながら、言葉を引くという辞典本来の使い方をするなら、書籍形態の方が便利だろうけど。

からくり人形/鈴木一義(著)、大塚誠治(写真)/学研

からくり人形―微笑に隠された江戸ハイテクの秘密 (学研グラフィックブックス)

からくり人形―微笑に隠された江戸ハイテクの秘密 (学研グラフィックブックス)

図書館。主に日本(江戸時代)のからくり人形を扱う。田中久重や大野弁吉といった天才的なからくり師の紹介や、からくりの歴史に触れるテクストも興味深いけど、やはり図版がメイン。からくりの"動き"を見れないのは残念だけど、美術的にも美しいからくりが多いだけに眼福、眼福。写真は大変キレイ。

中国盆景の世界1〜盆景/農山漁村文化協会

中国盆景の世界 (1)

中国盆景の世界 (1)

図書館。お隣中国の「盆栽芸術」の本格的概説書。日本では「盆栽」=「植木」ONLYのイメージで、木を鉢に植えてチョッキン、チョッキンという感じだが、本家筋の中国ではもっと範囲が広くて、盆上に景観を再現する営み…となるわけで、日本の盆栽よりも西洋のテラリウムを連想する方が理解が早いのかもしれない。末尾に付せられている実例写真を見ると、陶製人形を配したり、様々な奇石(植物より石のインパクトの方が大きいのね…)を配したりと、日本の盆栽とは丸っきり違う世界。写真はもうちっと綺麗な方がいいかな〜と思ったり。

過防備都市/五十嵐太郎中公新書ラクレ

過防備都市 (中公新書ラクレ)

過防備都市 (中公新書ラクレ)

図書館。戦争、テロ、凶悪犯罪…危機の影に肥大・暴走するセキュリティー意識の危険性を、都市のセキュリティー・防犯対策から読み解く。排除系オブジェの写真にはイヤ〜ンな気持ちになってしまったよ。そりゃあホームレスとかジベタリアンとか路上ライブとか"不快"かもしれないけどさ。それを排除するトゲトゲしさが結果的に、「都会砂漠」として跳ね返ってくるんじゃあるまいか。

気になる物件/泉麻人/扶桑社

気になる物件

気になる物件

図書館。街頭のヘンなオブジェを観察するエッセイ集。あんまり面白くないか。赤瀬川源平路上観察学がトコトン"見る"ことにこだわっているのに対し、こっちは来歴を聞いたりとか中途半端。あと写真の大半がモノクロ。これは×。一部のカラー写真につけた数行のコメント…この方がいい。

見知らぬ扉/森真沙子/日文文庫(日本文芸社


『見知らぬ扉』
森真沙子(著)
日本文芸社(日文文庫)、2000年、ISBN:4537080884
図書館。「幻想文学」でこの人読んだことがあったなあ。短編集…と見せかけて枠物語。お約束の大ドンデン返し…が巻末に用意されているんですが、さして驚かなかった。むしろ巻末を読んでさらに謎は深まった…というトコロ。

ニューヨークの24時間/千葉敦子/文春文庫(文藝春秋

ニューヨークの24時間 (文春文庫)

ニューヨークの24時間 (文春文庫)

図書館。NY在住のフリージャーナリストが綴る海外生活エッセイ。さすがキャリアウーマンだけに自分探しとかメンヘルなことを言わずに、ひたすら知的実用本。ひと昔前の知的整理術ですけど、基本的な精神(優先順位、餅は餅屋…などなど)は電脳時代の現在でも参考にするべきかと。海外生活者にありがちの声高の日本批判はカチンと来るなあ…全部もっともなところが。

戦争報道とアメリカ/芝山哲也/PHP新書

戦争報道とアメリカ (PHP新書)

戦争報道とアメリカ (PHP新書)

図書館。湾岸、アフガン、イラク…戦争における報道メディアの動きと、情報戦略を当事者であるアメリカを中心に描く。メディア論として終始一貫していればいいのに、後半からネオコン論に踏み込んでやや取り止めが無い。