恐怖の兜/ヴィクトル・ペレーヴィン/角川書店


恐怖の兜 (新・世界の神話)

『恐怖の兜』
ヴィクトル・ペレーヴィン(著)、中村唯史(訳)
角川書店
2006年
ISBN:4047915238



「いったい、ここは、どこなんだ!?」
彼らは孤独に、それぞれ目覚める。
そこは小さな部屋、あるのはベッドとパソコンだけ。
居場所を把握するため、仲間探しのチャットが始まる。
――カバー表見返しより
図書館。謎の空間に別々に幽閉された男女8人。脱出のための情報交換をしながら浮かび上がってきたのは、ミノタウロス迷宮伝説との符合。そして、明らかになる驚愕のラスト。映画「キューブ」「ソウ」を思わせる不条理な拘禁・拘束設定からの脱出・逃亡を描く…のかと思いきや、途中から迷宮伝説、仮想現実、人間存在を巡る議論になっていくのは純文学…という気がします。


全編チャット形式…という体裁から『電車男』っぽいと言われとりますが、むしろベケット、イヨネスコなどの不条理劇の世界に近い。ブロツキー『大理石』、レム『惑星ソラリス』、あるいはタルコフスキー映画も連想する。訳はいいと思いますけど、言葉遊びが多い本作を日本語で味わうのはキツイかも。