京のかざぐるま/吉橋通夫/日本標準


京のかざぐるま (シリーズ本のチカラ)

『京のかざぐるま』
吉橋通夫(著)、なかはまさおり(絵)
日本標準(シリーズ本のチカラ)
2007年
ISBN:4820802976


図書館。以前読んだ『なまくら』同様、京都を舞台に時代(幕末)の陰で懸命に生きる少年・少女の姿をえがく短篇集(7篇)。筆職人(「筆」)、車大工(「さんちき」)、おけ職人(「おけ」)、材木流し(「かがり火」)、果樹栽培(「夏だいだい」)、マタギ・団子売り(「マタギ」)、船宿の女将・仲居(「船宿」)。


背後に幕末の歴史の大きな流れがあり、それが前面に出てくる作品(「かがり火」「夏だいだい」は禁門の変、「船宿」は鳥羽・伏見の戦い)もあるのだが、あくまで庶民目線の切り取り方。その意味で「かがり火」の大儀に殉じて商人ながらも戦に参加する主人と日和見な人足の若者たちの温度差は印象的…。一篇あげるとすれば、しんみりとした味わいの「筆」か。拾われて育っていい思い出もないけれど、たとえ養家でも「家」が無くなってみると淋しい…泣ける。あとおけ職人の意地に、長州屋敷を巡る陰謀が交錯する「おけ」も力作。



【収録作品】
筆/さんちき/おけ/かがり火/夏だいだいマタギ/船宿