セイロン亭の謎/平岩弓枝/新潮文庫


セイロン亭の謎 (新潮文庫)

『セイロン亭の謎』
平岩弓枝(著)
新潮社(新潮文庫
1998年
絶版・品切
ISBN:4101241120


神戸の異人館に住む紅茶輸入業一族。その女当主が殺された。あととり息子の嫌疑を晴らすべく、親友の矢部は独自の調査をはじめる。Do you know the secret of Ceylon house? 事件直前の謎のメッセージ。セイロン亭の謎とは? 事件は戦前の詐欺事件と繋がり思わぬ展開を見せる…。


御宿かわせみ」シリーズで有名な時代小説家・平岩弓枝の現代小説。神戸異人館、紅茶、洋食、華麗なる一族…いかにも大時代な道具立てで、複雑な人間関係にややこしい血縁関係がキイになるあたり、横溝正史センセイの伝奇ミステリーっぽいところもあるが、基本的には和製コージーミステリーといった感じ(紅茶だからバタ臭い?)。ミステリーとしては弱いし、サスペンスとしても弱く、人間描写も紋切り。異人館も…舞台として使い切れてないし。


主人公の実家が老舗の茶問屋(日本茶)で、その親友がティーサロンの若主人ということで、日本茶と紅茶の思わぬ繋がりが本作品のミソになっているんですが、よかったと思えるのはそこら辺のネタの使い方ぐらい。「紅茶だのコーヒーが流行って、あげくが烏龍茶じゃないの。日本のお茶はただで、コーヒー、紅茶が500円だなんて、可笑しいわよ」(本書51頁)という台詞に一本。