歌劇「どろぼうかささぎ」(ロッシーニ)ハイライト/NHK-教育

芸術劇場〜藤原歌劇団公演・歌劇「どろぼうかささぎ」(ロッシーニ)ハイライト


ひところまで、=(イコール)セヴィリアの理髪師という紋切り型の理解しかされてこなかったロッシーニだが、ロッシーニ・オペラ・フェスティバル日本公演がデカデカと新聞の一面を飾るなど派手な動きがある中で、おこなわれたセミセリア作品の日本初演のハイライト放送…まさにタイムリー。


下働きの娘(ヒロイン)と地主の息子との恋愛に、横恋慕の中年男(代官)が絡んで騒動になる…というオペラ・ブッファ(喜劇)によくある筋書きですが、この代官がワル(いわゆる悪代官…ですね)で、銀食器泥棒の疑いをかけられた娘を投獄して自分の言うこときかせちゃおうとたくらみ、その結果、娘は死刑寸前まで追いつめられるというシリアスな要素があるのがオペラ・セミセリア(半分シリアスなオペラ)と呼ばれる由縁だが、シリアスな部分は音楽もシリアス、嘆き節あり、生か死かの緊迫あり、裁判では厳粛なムードが流れ、処刑シーンでは太鼓連打の葬送行進曲が流れ…と盛り上げる。


指揮のアルベルト・ゼッダは爽快な指揮ぶりを見せくれたし、オケもその棒によくこたえていたけど、シリストは…やっぱり大変だったのかなぁと思う。ジャンネット役のシラクーザは朗々と歌っていたけど、ニネッタ役の人は前半が不調気味だったし、ほかソリストも歌っていて苦しそうだな…と見てとれてしまうところがチラホラ。頑張っている感じが伝わってくるけど。声楽的には万全ではなかったものの、演技面でカバーしたという感じ? とくにメイクでお代官サマぶりを強調していた代官役のかたが光っていた…。


演出はクラシックな装置を使ったスタンダードなものだったが、ときおり入る静止演技やら(歌舞伎の)花道を思わせる入退場など、芝居っ気たっぷりの見せ方ですんなり見られた。今回の公演の呼び物(になったらしい)かささぎ君って、ラジコン飛行機かよ…いい動きですけど、TVで見るならともかく、実際に舞台で見た人は、ハラハラしたんじゃないですか(苦笑)。


耳に楽しく、目にも快い舞台だったわけですけど、つくづくハイライトだったのが残念。オペラの人間関係を見取り図つきで解説したり、みどころを紹介したりと解説パートはなかなか面白かったんですけど、予定されていたらしいゲストが不在で、案内役の中條アナウンサーひとりというのがチョイ淋しかった…。
(2008年06月20日放送)