この本10冊―2008年以前(文芸書)

No. 書影 書名 著者 出版社 コメント
1. 夜明けの風 『夜明けの風』 ローズマリー・サトクリフ ほるぷ出版 ローマン・ブリテンの終焉。歴史の激動。敗者としての屈従。その中で培われる強さ。少年の成長の過程を新しい文明の息吹きとダブらせつつ描く名作。
2. はるかな国の兄弟 (岩波少年文庫 85) 『はるかな国の兄弟(岩波少年文庫)』 アストリッド・リンドグレーン 岩波書店 北欧文学は暗い(笑)。「ピッピ」「やかまし村」のリンドグレーンも、一方で北欧神話の終末思想(ラグナロク)を連想させるこのようなファンタジーを書いてしまう。
3. なまくら (YA!ENTERTAINMENT) 『なまくら』 吉橋通夫 講談社 いささか手垢のついた感のある市井の人々の歴史絵巻だが、それだけに手堅く読ませる。泣かせる。京都の言葉と風土を生かした文章もいい。
4. 終末の海 Mysterious Ark 『終末の海 Mysterious Ark』 片理誠 徳間書店 皮肉ではなく一発勝負で出る味がある。磨かれていない原石の輝き。ミステリーとしてもSFとしても"巧くない"作品ではあるが、どこか心にひっかかった。
5. 恐怖の兜 (新・世界の神話) 『恐怖の兜』 ヴィクトル・ペレーヴィン 角川書店 チャット形式というスタイル(文体)の面白さもあるが、電脳→迷宮→ミノタウロス…というイメージの重層構造が巧い。エンターテイメントとしても秀逸。
6. ロボット (岩波文庫) 『ロボット(岩波文庫)』 カレル・チャペック 岩波書店 ロボットの語源になった云々はさておき、文明論、風刺として秀逸で、現在でもいっこうに古びない。
7. 土星の環―イギリス行脚 (ゼーバルト・コレクション) 土星の環―イギリス行脚』 W・G・ゼーバルト 白水社 英国に住みドイツ語で書くドイツ人作家。その紀行は時間と空間を自在に行き交う。単にイギリス紀行文学としても秀逸。
8. 神を見た犬 (光文社古典新訳文庫) 『神を見た犬(光文社古典新訳文庫)』 ディーノ・ブッツァーティ 光文社 先行訳でほとんど読んでいるのだが、簡便な文庫の新訳で出してくれた心意気に。訳もよく、セレクションもよい。
9. カエサルの魔剣 (文春文庫) カエサルの魔剣(文春文庫)』 ヴァレリオ・マンフレディ 文藝春秋 西ローマ帝国滅亡に、西ローマ帝国最後の皇帝…これだけでもオラわくわくしてきたぞ。イタリイの司馬遼太郎…みたいな感じなんでしょうかね? 学殖とエンタメ性の融合。
10. 無垢の力―「少年」表象文学論 『無垢の力―「少年」表象文学論』 高原英理 講談社 「少年」という切り口から日本近代文学に迫る。先行例はいくらでもあるが、その清新さを買う。