2006/07/09(日)読メモ

『喫茶店の片隅で』 諸井薫 (中公文庫版)

喫茶店の片隅で (中公文庫)

喫茶店の片隅で (中公文庫)

※図書館。タイトルが気になって。「喫茶店」は最初だけ…だったけどね。「男」が主語に来て、昭和一桁世代の世相エッセイと来ると、オジサン向けだが、肩肘張った説教もなければ、(最近話題のww)チョイ悪オヤジめいたナル〜な格好つけもなく、それなりに読めた。湾岸戦争の話題が時代を感じる。

川のある下町の話川端康成新潮文庫

※図書館。"川のある下町"*1を舞台*2に、医学生の青年と薄幸の美少女の恋愛を描く。解説にあるように、ベタベタなメロドラマのようにも思えるが、主人公が優柔不断なロリコン青年だったり、(薄幸という名の)美少女苛めが凄かったり*3少女小説顔負けの女同士の友情が濃く描かれていたり…斜に構えて読むと素晴らしい「メロドラマ」である。さすが『みずうみ』の川端。ノーベル賞受賞のイメージで古風な感じのある川端だが、パチンコ屋だの、進駐軍相手のキャバレエだの、モダンなものを描くセンスも鋭敏。

『書斎の博物誌―作家のいる風景』 海野弘

※図書館。「書斎」をテーマにしたエッセイ集…だが、掲載誌も内容も雑多なので、前作『書斎の文化史』のような統一性はなく、お手軽な感じだが、それでも面白く読める。末尾のシネインテリア第四回は没を喰らったそ〜だ。「読書する女」*4はどこがマズかった*5のか興味あるところ。

*1:「東京のN町」とだけある。「川」とは隅田川のことだろうから、たぶん浅草あたりだと思われるのだが。

*2:あと福生ここを参照。

*3:最後は発狂。回復の望みを匂わせてはいるが、感動の再会で締めくくらない結末に暗さを残す。

*4:ミュウ・ミュウ主演、レイモン・ジャン原作のフランス映画。映画は見ていないが原作は読んだことがある。それで判断するには、フランス映画らしい小品ってとこでしょうか?

*5:サドを読ませる判事のエピソードが×なのか。それともヒロインのバイトがムフフな出張サービスを連想させるからか?