スティーブン・キング シャイニング(1997年/洋画)エピソード3

エピソード3かんそう

最後のエピソード3*1。結末である。ついにホテルの亡霊の誘惑(酒)*2に屈してしまったジャック。ダニーの増幅する力(シャイニング)によって力を増す亡霊たちは、ジャックを使いダニーを我が物にしようとする。


ついに化物に成り下がってしまったジャックが痛々しい。1、2での抑えた演技が生きてくるというものだろう。恐ろしいというより哀しい。木槌*3を振りかざし虚勢を張るおとーさんとダニー…親子の対決→和解の場面は涙せずにはいられない(親子の葛藤は原作の大きなテーマである)。この場面があるからこそ、ボイラー室、エピローグのオリジナル展開が生きてくる。


欲を言えば、クライマックスはもっとスピード感が欲しかった。緊迫感が欲しかった。ジャックがあっちに出張、こっちに出張というのはややご都合主義に過ぎ緊迫感を殺していたし、ボイラー室のやりとりも緊迫感を欠いていた。ボイラーの爆発も…もっと派手な方がよかったなあ*4


他は概ね期待通り、いや期待以上の映像化だった。バーはやや貧相(現地ロケなのに失礼)*5だったが、舞踏会のシーン*6キューブリック版よりも華やぎがあってこっちの方が好きだな。ダーウェントの仮装(仮面)で黒ミサ的なおぞましい雰囲気を漂わせているのもいい。
(2006年7月29日、DVDビデオ視聴)

スティーブン・キング シャイニング 特別版 [DVD]

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*1:原作の第35章から58章(完)まで。文春文庫版だと下巻p.143からp.430(完)まで。むろん細かな省略、異同はある。特に結末は。

*2:いわゆる"悪魔の誘惑"、"悪魔との契約"を現代的にアレンジしたもの。ゴシック的要素を巧みに現代的にアレンジしているのが原作の魅力である。ことに本作では原作以上にアルコール依存症テーマを前面に出しており、"飲むこと"のモラル的意味合いは大きい…やや過剰とも思えるほど。

*3:ジャックが振るう凶器はデンバー・クロッケーの木槌で原作通り。これをB級ホラーお約束の凶器である斧にすりかえたのはキューブリック。その当否は…人それぞれだろう。血が(外見的には)あまり出ず、刃物でもないので巧まずしてTV放送向きな凶器なのは皮肉だが、ジャックがヒュンヒュン振りまわすのを見ていると斧以上にイタソ〜で恐ろしく見えてしまう…。

*4:実在するホテルだからなあ。景気よく…とはいかないのか。

*5:バーテンダーが前管理人のグレイディーという趣向だったが、バーの雰囲気とバーテンダー慇懃無礼さの差でキューブリック版の方が印象に残る。

*6:やけに目立つ楽団の指揮者は…フフ誰でしょうね。他を探すと、ハローランと会話を交わすガソリンスタンドの男が、スパイダーマンシリーズで売れっ子になったホラー監督のサム・ライミ。エピソード2冒頭の断酒会のメンバーの一人がミック・ギャリス監督。217号室の女がギャリス監督の奥さん。