『鳴りひびく鐘の時代に』 マリア・グリーペ(冨山房)


『鳴りひびく鐘の時代に』
マリア・グリーペ(著)/ 大久保貞子(訳)
冨山房、1985年、絶版・品切、ISBN:4572004528


図書館。児童文学。スウェーデンの女流児童文学作家マリア・グリーペの作品。中世後期の北欧に舞台をとった歴史モノらしい。訳者あとがきに、ホイジンガの名著『中世の秋』に触発されたとあるが、たしかにその影響がうかがえるような描写が散見して興味深かった(特に「死の舞踏」のシーン)。


メインはあくまで少年少女の葛藤や交流。王子と身代わり役との友情および入れ替わり(マーク・トウェイン『王子と乞食』)というのはよくあるネタだが、活発で前向きなヘルゲ(身代わり役)よりも、むしろ後ろ向きなアルヴィド王(主人公)の心理に焦点が置かれ、しかも終始暗いままつ〜のは驚いた。王の責務に目覚めて改心するつ〜のが、お約束な成長物語展開なんですけど、それをあっさり否定しちゃうのがいかにも、北欧文学っぽい(湿っぽさと…書くと否定的なイメージになるか。北欧的憂愁とかそんな感じ)。


あと付されている挿絵(作者の旦那さま画)が素敵。