パンズ・ラビリンス(2006年/洋画)


パンズ・ラビリンス(2006年/メキシコ、スペイン、アメリカ)
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
出演:イバナ・バケロ(オフェリア)、セルジ・ロペスビダル)ほか
参照→パンズ・ラビリンス - allcinema



1947年、内戦終結後もゲリラ掃討戦が続くスペイン山間部
軍人ビダル将軍に嫁ぐ寡婦カルメンとその娘オフェリア
冷酷で残忍な義父との生活にオフェリアは馴染めない
そんなある日、オフェリアは森の迷宮(ラビリンス)で
不思議なパン(牧神)と出会う。彼女を"王女"と呼ぶパン
が、その証として三つの試練を彼女に課すのだった…


スペイン内戦後の山間部を舞台に、フランコ派の軍人に嫁いだ母娘の物語と、幻想世界が交錯するファンタジー映画。義父にも山暮らしにも馴染めず、母も身重…という閉塞状況下で、幻想の世界に深入りしていく少女。その結末は…。


アイタタタタ…あの結末は途中から兆候(幻想を否定する母の言葉と、母の死別)があったので、ある程度予想はついたけれど、それでも痛すぎる。でも、幻想を捨てて現実に戻るのも、幻想でも現実でもハッピーエンドというのも、共にありきたりで、しかもご都合主義だし、やはり幻想にはある種の「痛み」が伴うもの…と解釈すべきなのかな? 妖精、パン、泥カエル、マンドラゴラ、食人鬼…幻想の生物はファンタスティックというよりグロテスク。特に第二の試練の食人鬼(H.R.ギーガーのクリーチャーっぽい…)はかなりおぞましい造型。あんなのが眠っている鼻先でよ〜つまみ喰い出来たモンです>オフェリア。


でも、一番怖かった…というより、インパクトがあったのが「大尉」=義父(おとうさん)であるビダル将軍。れっきとした現実世界の人間なんですが、暴君さながらの暴力性(キレて暴行・拷問・殺人…)と、その裏に潜む複雑な人間性(父の影、演技的な振舞、自尊心…)と、ある意味一番「幻想的な存在」。息子(オフェリア弟)を抱えて共和国派ゲリラに囲まれる最期のシーンは滑稽でもあり、悲壮でもあり…英雄譚や怪物譚の結末のよ〜な余韻を残す…。


額面通り正統ファンタジーを期待した向きには、ちょい肩透かし? ワタクシとしては、マジックリアリズム的方向に行くのかな〜と思っていたのですが、それともやや違う方向性だったので、あの最後に戸惑ってしまったんですが、苦く渋く黒いもやもやを残してくれる"いい"映画…だったと思います。
(2007年10月31日、恵比寿ガーデンシネマ