悪魔の百唇譜/横溝正史/角川文庫

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『悪魔の百唇譜』
横溝正史(著)
角川書店(角川文庫)
1976年
ISBN:4041304288


図書館。蒸し暑い6月。深夜の東京成城の高級住宅街。不審駐車の外車、その後部トランクから発見されたのは、胸をひと突きに殺された美女の死体。添えられた"ハートのクィーン"のカードは何かの符号か? やがて似た手口の男の刺殺死体が発見される。不倫と嫉妬の果ての惨劇、それとも…。ドラマ見たので気になったので読んでみましたが…これに関してはドラマの方がマシかなぁ。上述のように見立ての趣向(横溝作品の十八番)が使われているのだが、これが効果が薄い上にトリックもつまらなく、ミステリーとしては物足りない。


かといって「小説」としても面白く無い。最後あたりはほとんど投げやりだし。これじゃあ、君島の奥さんと田中実の浪花節で〆たドラマ版の方がマシやん…。やっぱりこの作品の醍醐味って「百唇譜」に象徴される悪趣味なエログロ要素しかないのね…。旦那が華僑だったり、"男色"がクローズアップされていたり、ドラマとの違いもいろいろあるのですが、読むほどの違いでもナシ(と散々に書いたけど、画廊に通ったり、鬱になったり、トースト焦がして貧しい朝食…などなどの金田一の日常描写が多いのが読みどころと言えば言えるか…)。