屋根裏 みみず/坂手洋二/ハヤカワ演劇文庫
閉鎖空間を作り出す「屋根裏キット」をめぐる屈折した人間模様「屋根裏」。一見平穏だが、壊れてゆく団地家族のポートレート「みみず」。どちらもタイトルにあるものが、重要なオブジェないし「道具」として使われ、象徴的な意味をもたされている。「屋根裏」が内向してゆく現代日本社会だとしたら、「みみず」は現代日本のフツーの核家族…ということになるのだろうか?
「屋根裏」ではひきこもりや自閉症、「みみず」では家族のあり方がテーマとなり、社会的メッセージ性の強い作品ながら、それだけでなくスリリングな舞台的魅力にも満ちている。とくに屋根裏キットを狂言回しに、細かい場面を繋げていく「屋根裏」の構成は、フラッシュバックのようにスピーディーで印象的。